直木賞に続き本屋大賞を受賞した恩田陸の「蜜蜂と遠雷」を読む。2段500ページを読み切れるかなとの心配はすぐに消え、ピアノコンクールに挑む若い演奏家たちの「音」に魅せられ一気に読みました。
言葉は楽譜のようなもの、その言葉が意味のあるものならば、必ずそこに音楽を聴くことができる、と作者は言います。
逆もまた真なり。楽譜は言葉、フレーズは文章、曲は物語だ。生徒さんと一緒に曲の題名から物語を作ることもあります。
本の内容にコンクールの順位はあまり重要ではありません(実際の演奏家には重要です)。作曲家の意図を汲んだうえで、生まれも育ちも違う演奏家たちがどんな音を出して語るか、自分が聴衆の一人になってドキドキしながら聴きました。次の曲、その次の曲を「聴き」たくて「読む」、たぶん同じ経験をたくさんの人がしたからこその賞なのでしょう。この不思議な読書体験を、是非皆さんにお勧めします。